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日本伝統の捕鯨文化は是か、それとも非か。京都大のキャンパスで6月3日に開かれた討論イベントで、捕鯨の容認派と反対派が同じテーブルに着いた。双方が対峙(たいじ)するのは異例だという。それぞれの国が食を含めた多種多様な文化を育んできた中、捕鯨だけが標的になっている疑問を整理した容認派。これに対し、反対派はクジラを捕ることへの批判的感情をあらわにして応戦していたように見えた。互いの意見を尊重する趣旨で行われたが、果たして議論は深まり、解決の道は見いだせたのか。(小泉一敏)
クジラだけが捕獲制限
討論イベントの会場となった京大には約90人が集まった。捕鯨に関心のある学生や留学生のほか、反捕鯨に異を唱える映画「ビハインド・ザ・コーヴ」を手がけた八木景子監督が参加。インターネットを通じ、米国の反捕鯨活動家も討論に加わった。
「なぜクジラだけが特別なのか」。討論は、八木監督の疑問から始まった。
世界中を見れば、ウシやブタといった動物が食べられており、当然、魚も捕獲されている。イヌを食べる習慣のある国もある。反捕鯨団体はクジラだけではなく、ウシなども食べない「ベジタリアン(菜食主義者)になるべきだ」と訴えている。
だが、絶滅危惧種ではない種もあるにもかかわらず、クジラだけが全体に網をかけられて捕獲が制限されているのが実情だ。ウシは食べることに制限は一切加えられていないのだ。
八木監督は「クジラだけが制限されているのは大きな差で疑問だった。このことを関係者に取材を進める中で、矛盾だらけと分かり、その憤りがこの映画になった」と切り出した。