書評

批評家、西村幸祐が読む『誰が第二次世界大戦を起こしたのか』渡辺惣樹著 米大統領の不本意

『誰が第二次世界大戦を起こしたのか』
『誰が第二次世界大戦を起こしたのか』

 ■米為政者にタブーの歴史観

 ここ数年待ち望まれていた翻訳書がついに刊行された。米31代大統領、ハーバート・フーバーの回顧録『裏切られた自由』(上巻)の邦訳である。その翻訳を行った近代史研究家の著者による『裏切られた自由』の解説本が本書。2011年に米国で出版された、この回顧録のエッセンスと読み解く鍵が、訳者によって丁寧に紹介されている。

 原著は957ページの大著で7月に出た翻訳本も上巻だけで702ページに及ぶ。そういう意味で本書は普及版としての役目も担っている。フーバー大統領が20年以上かけてさまざまな関係者の証言や外交文書などの資料にあたり、自分の後を継いだ32代大統領、フランクリン・D・ルーズベルト(以下FDR)によって、米国が無用な第二次大戦に突入していく経緯と大戦後の不本意な世界秩序の形成を書きつづったものだ。

 なぜ、フーバーにとって不本意だったのか。渡辺氏は単刀直入に言う。《ルーズベルト外交によって、ソビエト共産主義の東西への拡散を防いでいた二つの強国、日本とドイツは崩壊した。(略)共産主義者との戦いはアメリカ一国で進めざるを得ず、再びアメリカの若者に死を覚悟させなくてはならなくなった》からだ。