めぐみへの手紙

拉致問題も戦争と同じように、幸せに生きる喜びを無残にも奪う 横田滋さん、早紀江さん

自宅前で仲良く写真に納まる横田めぐみさんと浴衣姿の弟、拓也さん、哲也さん=昭和52年、新潟市内
自宅前で仲良く写真に納まる横田めぐみさんと浴衣姿の弟、拓也さん、哲也さん=昭和52年、新潟市内

めぐみちゃん、こんにちは。日本はとても暑い夏の日が続いています。そちらでは、どんな夏の日を迎えていますか。お父さんとお母さんは年を取って、夏の暑さや日差しがいよいよ辛(つら)く、苦しくなってきましたが、あなたが元気に日本へ帰って来ることができるよう日々、祈りながら、支えてくださる多くの方々とともに一生懸命、がんばっています。

きょうは8月15日ですね。日本人にとって特別に重い意味を持つ「終戦の日」から、72年がたちます。84歳のお父さん、81歳のお母さんも、戦争の記憶は心の奥底に深く、はっきりと刻まれています。

戦局が激しさを増したころ、お母さんは小学校4年生で初めて親元を離れて、京都府の山奥のお寺に疎開しました。街中しか知らない子供でしたから、大自然のこんもりした緑、山の香りはとても強く、印象に残りました。そして、とにかく食べるものがなくて、本当にひもじかった。あぜ道を学校に通うときも、ずっと空腹に耐えていました。

皆、ひどくおなかをすかせているので、ふすまの焦げ茶色の取っ手が本物のチョコレートに見えてくるんです。「チョコレートがある!」と誰かが叫ぶと、皆が取っ手に押し寄せて、必死になめました。嘘のような話ですが、それぐらい飢えていたのです。