準優勝した1998年以来の出場で初戦で散った京都成章。九回2死から本塁打で追い付いたが、痛恨のサヨナラ負けを喫する幕切れとなった。エースで主将の北山にとって、甲子園は「これまでの苦労が報われる最高の場所」だったという。
悔やむべきは1-0の六回2死一、三塁のピンチ。高めのつり球を痛打され、2失点で逆転を許した。九回は自らの野選も響いた。それでも、140キロ台の直球を主体に11奪三振。1人で投げ抜いた。
当初は「周りが見えない」投手だった。転機となったのは、才能を見込む松井監督に、新チームから主将に指名されたこと。ミーティングで「なんで俺が抑えているのに打てないのか」と怒る一人よがりなエースは、チームメートと会話を重ねることで変わった。「私生活でも隙をなくすことが大事」と部室の掃除を丁寧にするようになり、頼れる主将へと成長した。
試合前夜、「感謝」の2文字を帽子のつばの裏に書いた。最後の夏が終わり、「みんなが助けてくれる。ピンチも楽しんで投げられた」。涙ではなく、仲間への思いがあふれた。(吉原知也)