毎年8月になると6日の広島、9日の長崎-と原爆に関する報道がなされる。ただし、日本に関する核の被害としてはもう一つ、マグロはえ縄漁船「第五福竜丸」(静岡県焼津市)の問題がある。それは63年前、昭和29年3月1日、第五福竜丸が太平洋のビキニ環礁付近で、アメリカの水爆実験に遭遇した乗組員たちが被曝(ひばく)し、無線長の久保山愛吉さんが半年後に亡くなった-という事件である。
最近の朝日新聞でも、7月14日に朝刊の1面と社会面で比較的大きく報じている。第五福竜丸の実物は現在、東京都江東区の夢の島公園にある展示館で保存されているが、7月13日に内部が特別に公開されたという記事で船体と船内のカラー写真が目を引く。
用語解説には「『ビキニ事件』『第五福竜丸事件』と呼ばれ、広島、長崎への原爆投下に次いで原水爆禁止運動の原点になった」とあるから、死者は1人であっても、社会に与えた影響は大きかったことがわかる。だから船体の永久保存が図られたのであろう。