※この記事は、月刊「正論9月号」から転載しました。ご購入はこちらへ。
A 参院議員(日本維新の会)の元公設第一秘書
B 衆院議員(民進党)の公設第一秘書
C 衆院議員(民進党)の政策秘書
D 衆院議員(自由民主党)の公設第二秘書
A 私は参議院の官僚出身議員の公設第一秘書をしていました。議員から「選挙を手伝ってほしい」とスカウトされ「秘書の仕事はしなくていいから」という話だったのですが、いざ事務所に来てみたら公設第一秘書だったのです。
秘書の雇い主は議員です。私設秘書は別ですが、給与はそれぞれの院が国費で支払っています。ですから議員から「明日から来てくれ」といわれれば、それで採用が決まって、あとは書類を出すだけ。逆に「もう明日からは来なくていい」と言われればそれでクビになってしまいます。労働基準法だって適用されませんし、「一カ月前解雇予告」などは一切ありません。
私の場合、公設第一秘書でしたから給与的には優遇されたってことなのでしょうが、実は私が入った影響で前任の方は突如降格されてしまっていた(笑)。ですから「おまえのせいで給料下がったじゃないか」という空気で事務所の雰囲気は最悪でした。
B 私は大学を卒業して大阪のメーカーでサラリーマンをしていたのですが、つまらないと思ってやめたんです。仕事を探していたらちょうど衆院選があったので選挙を手伝うことになって、地元秘書になりました。判で押したような暮らしを毎日繰り返すのとは違って議員も秘書も毎日めまぐるしく、いろんな人に会うのが、実に刺激的で面白かったんですね。
ただやればやるほど自分は苦痛に快感すら覚える「ドM」なんだな、と(笑)。きついとは思わなかったですが、いろいろヤな出来事はあって、やっぱり身分の不安定さ、給与の理不尽さ、いい加減さといったらこのうえない世界ですね。特に選挙。議員と秘書は「運命共同体」のような関係で落ちた時のリスクは半端ないです。
A そうだよね。派閥や党に拾ってもらうとか、永田町だと落選しても仕事をつなぐ仕組みが全くないわけではないが、議員の命運が直ちに直撃する関係だよね。
以前の話ですが落ちた瞬間、即刻秘書全員の解雇を伝えた候補者がいましたよ。さすがにこれはひどかったなあ。負けたら負けたで残務処理とかあるじゃないですか。選挙事務所をたたむにしたって手間もひまも掛かるわけです。敗れて呆然自失だったのかもしれないけど、一方では選挙に負けても誰一人秘書を解雇せず引き受け手を探して頭を下げて回るような議員だっているんですよ。結局、このケースではクビになった秘書が一カ月近くもボランティアで残務処理していました。本当にかわいそうでしたね。