慰安婦記述「学び舎」教科書採択の灘中 「政治的圧力あった」校長のエッセー、ネットで波紋

 今夏は小学校道徳の採択で運動が拡大。育鵬社は道徳に参入していないが、「(同社が)来年の中学校道徳への参入を目指している」などとあおって採択の傍聴を呼びかけたり、特定の道徳教科書を批判したりといった活動が確認されている。

 福岡市教育委員長時代に採択を経験した八尾坂修・開智国際大教授は「社会科では脅しのような行為がしばしばあるが、採択は風評に流されず厳正、中立に行われるべきだ」と話している。

 ■本紙報道 採択理由非公表を問題視

 灘中の和田孫博校長がエッセーの中で触れた昨年3月19日付産経新聞記事では中学歴史教科書で唯一、慰安婦記述のある「学び舎」の教科書を難関校が相次いで採択している実態を報じた。さらに、教科書無償措置法で採択理由を公表する努力義務が自治体教委だけでなく、国立中や私立中の校長にもあると明記されているにもかかわらず、取材した学校の大半が採択理由を公表しなかったことも問題視した。

 一部の学校は「物語風に書かれ、内容も詳しい」と説明したが、灘中は採択理由を答えなかった。

 和田校長は今回のエッセーの中で、「本校教頭は電話取材に対し『検定を通っている教科書であり、貴社に採択理由をお答えする筋合いはない』と返事をしたが『理由非公表』と記事にされた」と批判したが、記事では同じ趣旨の言い分を掲載している。

【用語解説】教科書無償措置法 義務教育で使用する教科書を無償配布するための手続きなどに関する法律。国が学校設置者に無償給付すると規定しているほか、教科書を選ぶ採択について区域の設定、権限、期間などを定めている。15条では、採択した教科書やその採択理由などを公表する努力義務を、市町村教委や都道府県教委、国立や私立の小中学校長に課している。

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