和田校長のエッセーでは、産経新聞の報道が外部勢力からの批判の口火になったとの趣旨が記されている。ただ、記事が教科書無償措置法に基づく採択理由公表の努力義務の観点から、同校が採択理由を公表しなかった対応を問題視したことには言及していない。
採択の時期狙う?
昨年9月にネット上で公開された和田校長のエッセーが、なぜ今になって拡散されているのか。
教科書採択に詳しい八木秀次麗澤大教授は、「(拡散は)採択時期に合わせた動きだろう」と指摘する。
教科書採択は毎年7月中旬から8月末に行われ、特に今年は初めての小学校道徳の採択が各自治体などで行われている。
「来年は中学道徳など、再来年は小学校全教科などと続いており、採択をめぐる運動をあおる狙いがあるのではないか」。八木教授はそう分析した。
■育鵬社教科書にも激しい不採択運動
中学歴史教科書の採択をめぐっては、自虐的な歴史観の教科書を批判して平成14年に扶桑社が新規参入して以来、激しい不採択運動が各地で展開されてきた。扶桑社教科書を育鵬社が継承した後も、同社や歴史教育の改善などに取り組んできた「新しい歴史教科書をつくる会」のメンバーらが執筆する自由社に対して行われ、原則4年に1回の中学教科書採択の度に見られる。
全国最大の採択区、横浜市で同市教委が育鵬社版を初めて採択した23年夏には、当時の市教育委員長が採択後の会見で「多くの辞任要求を出され、誹(ひ)謗(ぼう)中傷を受けた」と吐露。市教委への抗議などのメールとファクスが大量に届き、事務局が「とても数え切れない」と悲鳴を上げていた。