中学歴史教科書で唯一、慰安婦の記述のある「学び舎」(東京)の教科書を採択した私立灘中学(神戸市)の和田孫博校長が昨秋、同人誌に寄せたエッセーが今年7月末からインターネットなどを通じて拡散され、波紋を広げている。エッセーは同社教科書を選んだ同校に政治的圧力があったと主張。一方、小学校道徳の教科書採択の時期を狙ってエッセーが拡散された可能性も指摘されており、和田校長は「とまどっている」と話した。
同じ文面200通以上
和田校長のエッセーは「謂れのない圧力の中で-ある教科書の選定について-」とのタイトル。学生時代の友人と手掛ける同人誌に寄せ、昨年9月9日付でインターネット上に公開した。
「学び舎」の教科書を採択した同校に対し、自民党の県議や衆院議員から問い合わせの電話があり、さらに組織的とみられる同じ文面の抗議はがきが200通以上届いたことを明かし、「政治的圧力だと感じざるを得ない」などと論じている。
今年7月31日未明に放送された毎日放送(大阪市)のドキュメンタリー番組で、匿名で紹介されたのがきっかけとなり、ネット上で拡散したとみられる。今月9日付の毎日新聞朝刊でも和田校長のエッセーが紹介され、灘中を含め「学び舎」の教科書を採択した全国の国立、私立中11校に抗議のはがきが大量に送られたことを報じた。
「静観してほしい」
「(エッセーは)昔からの友達に知ってもらいたかった。大きな話題になり、とまどっている。静観してほしい」。和田校長は今月8日、産経新聞の取材に、自らのエッセーが波紋を広げていることに困惑した様子で話した。
自民党衆院議員からの問い合わせの電話については、「当時は抗議のはがきなどと関連づけてしまった。政治的圧力だと感じたことは一切ない」としている。
産経新聞は昨年3月19日付で「学び舎」の教科書をめぐり「慰安婦記述30校超採択」「灘中など理由非公表」との見出しで、同年4月使用開始の「学び舎」の教科書が、灘中などの難関校を含め少なくとも全国30以上の国立、私立中で採択されたことを報じた。灘中は当時、採択理由について「検定を通っている教科書であり、理由を公表する必要はないと考えている」と回答している。