一筆多論

優生思想の根を絶ちたい 「共生集団」は能力が高い個体ばかりの「エリート集団」より存続する力が強い 中本哲也

 進化論と優生思想について書く。これまでにも一筆多論で取り上げたテーマだが、「何度でも書かなければならない」という思いが強くなった。

 相模原市の障害者施設で入所者19人が殺害される事件が起きたのは、昨年の7月26日だった。

 殺人罪などで起訴された元職員の被告は、産経新聞の取材に手紙で応じた。

 「意思疎通がとれない人を安楽死させます」

 「最低限度の自立ができない人間を支援することは自然の法則に反する」

 文面から読み取れるのは障害者に対する強い差別意識だけだ。

 被告が自己正当化のよりどころとした「自然の法則」とは、チャールズ・ダーウィンが進化論の柱として提唱した自然選択(淘汰(とうた))説を指すのだろう。環境に適応する能力を獲得した生物が生き残り、適応できなかった生物は淘汰されていくという考えだ。

 自然選択を人為的に行い人類の進歩を促そうという発想から、19世紀の終わりに優生思想は生まれた。

 大規模かつ残虐に実行された人為的な淘汰が、ナチス・ドイツによるユダヤ人や障害者の大量殺戮(さつりく)である。重度の障害者を「安楽死させる」とした被告の差別思想も根は同じだ。

 相模原事件後、知的障害児の親の団体などからなる「全国手をつなぐ育成会連合会」には、被告の優生思想に共感、同調する内容の手紙やメールが寄せられたという。

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