夏の行楽シーズンを迎え、九州北部豪雨で打撃を受けた観光業に対する支援策が整いつつある。大分県は県内のツアーを対象に支援を始めた。福岡県も8月中旬までに宿泊旅行を含んだ補助策「ふくおか応援割」を創設する。熊本地震後の観光復興を下支えした「九州ふっこう割」の再現を狙う。 (中村雅和)
「夏休みが近く、一刻の猶予もならない」
7月18日、大分県の広瀬勝貞知事は、記者会見で観光産業への危機感をあらわにした。広瀬氏は同日、豪雨対策として約11億円の補正予算を専決処分した。
補正予算の中で、約5400万円を観光誘客緊急対策費として確保した。日帰り旅行を主な対象として、旅行会社にツアー企画を呼びかけ、旅行代金の一部を補助する。
また、県内の観光協会などに対し、PR事業費の3分の2を補助する。
こうした施策で、観光の落ち込みを食い止めようとしている。
被災地を中心に、福岡・大分両県では、旅行キャンセルが相次いだ。
福岡県朝倉市の原鶴温泉の老舗旅館「泰泉閣」は、建物が浸水した。従業員総出で泥や水をかき出して消毒し、約1週間後に営業再開にこぎ着けた。
しかし、例年ならほぼ満室となる盆前後でも、予約は空きが目立つ。林恭一郎社長は「風評被害が長引く恐れもあり、カンフル剤として支援策があれば」と期待する。
大分県内では17日までに約1万5千人分、福岡県内でも20日までに約1万2千人分の宿泊キャンセルが発生した。日帰り客も含めれば、影響はさらに膨らむ。 日田市観光協会の担当者は「施設の被害は少なく、例年通り宿泊できるのにキャンセルが多い」と嘆く。
■行って応援
熊本地震では、九州への旅行代金を国が助成する「ふっこう割」が、関係者の助けになった。
最大で7割引という値下げ幅や、首都圏や関西圏での誘客イベントも奏功し、申し込みが殺到した。
九州観光推進機構によると、ふっこう割の利用は昨年7〜12月で、計217万9千泊に達した。政府が当初目標としていた150万泊を大きく上回った。
今回の豪雨災害でも、ふっこう割と同様の支援策を求める声が上がった。
大分県は7月から制度を導入した。福岡県は8月中旬をめどに、29年度当初予算から約1億円を捻出し独自の支援策「ふくおか応援割」を始める。朝倉市や東峰村など被害が大きかった4市町の宿泊や観光を組み込んだツアーに対し、1人あたり2千〜3千円を補助する。来年1月末までに2万3千人の利用を目指す。
小川洋知事は「被災地は温泉や果樹園など県を代表する観光資源が多い。『行って応援、買って応援』してもらいたい」と語った。