■ □
出版社の危機感も強い。老舗の新潮文庫は昨年から毎月の新刊点数を意識的に絞り始めた。
「売れないから新刊をたくさん出す。結果、読者はますます何を手に取ればいいか分からなくなる-という悪循環があった。点数を減らせば1冊1冊丁寧に売り方を提案できる」と三重博一文庫出版部長。7月刊の中山七里さんのサスペンス『月光のスティグマ』は単行本時と装丁を大幅に変えて新鮮さを演出。すぐに増刷がかかった。新潮文庫全体の昨年度の新刊点数は前年度より50点以上減ったが、販売部数は逆に増加するなど効果は出始めている。
三重さんは言う。「携帯に便利な文庫は本として完成されたパッケージ。再生に向けた試みを地道に積み上げたい」