広角レンズ

覆面販売 再生なるか文庫市場 出版社別→著者別へ

 試みの背景に、単行本が出た3年前の苦い経験がある。当時、一読し魅了された平野さんだが、宣伝の妙案は浮かばずじまい。文庫化で再度めぐってきた機会に、助けとなったのが新たに添えられた人気作家の解説だった。書名と著者名をカバーで覆う覆面販売で話題を呼んだ「文庫X」のヒットも背中を押した。平野さんは「工夫次第で本は売れる。文庫本は書店にとってリベンジのいい機会でもある」と話す。

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 文庫本の低迷は深刻化している。出版科学研究所によると、昨年の文庫本の推定販売金額は1069億円。3年連続で6%台の大幅減となり、市場はピーク時の約7割にまで縮んだ。久保雅暖研究員は「人口減や書店減という逆風に加え、スマートフォンの普及で娯楽が多様化したのが大きい。価格の上昇で、文庫の強みだったお得感も薄れてきた」と話す。

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