エディトリアルデザインとは新聞、雑誌、書籍など出版物のデザインのこと。日本における草分けといえば、戦前戦後に数多くの装丁を手掛け一時代を築いたデザイナー、原弘(ひろむ)(1903〜86年)だろう。
原を敬愛し、高度成長期の雑誌界でエディトリアルデザインのあり方を強烈に示したのが、アートディレクターの江島任(たもつ)(1933〜2014年)だ。婦人誌「ミセス」からモード誌「ハイファッション」「装苑」、男性誌「NOW」「PLAYBOY日本版」まで、手掛けた雑誌は幅広い。先見性や卓抜したセンスを要する仕事だが、江島は何より「手を動かす」人だったという。斬新なレイアウトは、手で切りはりしながら生み出されたのだ。
偉大なディレクターの仕事を本人や関係者の肉声をまじえて紹介する作品集『アートディレクター江島任 手をつかえ』(リトルモア・5000円+税)がこのほど、東京アートディレクターズクラブ(ADC)が毎年最も優れたエディトリアルデザインに贈る「原弘賞」に選ばれた。手掛けたのは、江島の弟子だったアートディレクター、木村裕治だ。
実は江島も、原弘の没後にその作品集のエディトリアルデザインを行っている。原弘から江島、そして木村へ。エディトリアルデザインの魂は受け継がれてきたが、出版界は今、紙からデジタルへと急速に変化しつつある。「巧(うま)い雑誌のデザインというものには、血が通っている」と江島は語っていたそうだが、その精神は今後、どう継承されていくだろうか。