論壇時評

8月号 若手論客の劣化、衰弱する論壇……復活の厳しさ露呈した民進党議員座談会 文化部・磨井慎吾

東京都議選の結果を受けて記者会見を行う民進党の松原仁・都連会長(当時) =2日、東京都千代田区の民進党本部(飯田英男撮影)
東京都議選の結果を受けて記者会見を行う民進党の松原仁・都連会長(当時) =2日、東京都千代田区の民進党本部(飯田英男撮影)

6月に刊行された北田暁大・栗原裕一郎・後藤和智による鼎談(ていだん)本『現代ニッポン論壇事情 社会批評の30年史』(イースト新書)がおもしろい。

社会学者、文芸批評家、評論家という組み合わせで、平成以降の主としてリベラル系の論壇を語るのだが、基調となるのは「日本の左派はなぜ経済の話ができないのか」という怒りだ。貧困や格差を問題視する割には経済政策に無理解で、経済成長を否定した「清貧の思想」的精神論に走りがちな人文系リベラル知識人その他を俎上(そじょう)に載せ、公憤私憤入り交じる批判を繰り広げ遠慮がない。

そして同時に論じられるのが、現在の論壇の衰弱だ。「論壇的には新書の席巻の負の効果がすごく大きかったと思います。新書が雑誌の代わりになりましたから」(北田)という発言もあるが、たしかにこの本自体も昔なら「諸君!」あたりで座談会として企画されていたような内容である。

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