6月に刊行された北田暁大・栗原裕一郎・後藤和智による鼎談(ていだん)本『現代ニッポン論壇事情 社会批評の30年史』(イースト新書)がおもしろい。
社会学者、文芸批評家、評論家という組み合わせで、平成以降の主としてリベラル系の論壇を語るのだが、基調となるのは「日本の左派はなぜ経済の話ができないのか」という怒りだ。貧困や格差を問題視する割には経済政策に無理解で、経済成長を否定した「清貧の思想」的精神論に走りがちな人文系リベラル知識人その他を俎上(そじょう)に載せ、公憤私憤入り交じる批判を繰り広げ遠慮がない。
そして同時に論じられるのが、現在の論壇の衰弱だ。「論壇的には新書の席巻の負の効果がすごく大きかったと思います。新書が雑誌の代わりになりましたから」(北田)という発言もあるが、たしかにこの本自体も昔なら「諸君!」あたりで座談会として企画されていたような内容である。