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■「不機嫌さ」を反面教師に
NPO法人「ファザーリング・ジャパン(FJ)」の代表理事、安藤哲也さん(54)は、「笑顔の父親」を増やそうと活動を続けてきた。今年、設立から丸10年。続けてきた原動力は、大嫌いだった父、幸典さんへの反発心だった。
「父を一言でいうと、不機嫌な人、でしたね」
勤務先の造幣局(当時・東京都豊島区)の近くに住んでいた幸典さん。夕方には帰宅するが家事は一切手伝わず、妻の光子さん(85)にキツい言葉を浴びせていた。「料理がまずい」「兄嫁を見習え」-。
2DKの官舎に幸典さんの怒鳴り声が響く。「なんで毎日イチャモンをつけるんだろう」。安藤さんは自室にこもり、ヘッドホンでビートルズの曲に没頭した。
「不機嫌な父」が当たり前じゃないと気づいたのは、小学校高学年の頃だ。友達の家では夫婦仲良く話していたり、父親が紅茶をいれてくれたり…。自分の家との差に衝撃を受けた。母に対する父の言葉の暴力は幼心を傷つけた。
成人後も父を許すことはできなかったが、35歳で家庭を持つと、その遺伝子が受け継がれていることを強く意識した。妻とけんかしたとき、父のように毒のある言葉を吐く自分がいた。