「自分は一度政治的に死んだ人間だ」
「日本中から『お前はダメだ』という烙(らく)印(いん)を押され、地獄を見てきた」
24年9月に再び自民党総裁選に出た際には、会合などでよくこう述べ、辛酸をなめた経験を紹介していた。どん底から自力ではい上がった安倍首相が、今回の支持率急落ぐらいで闘志を失うことはない。
背景には、憲法改正や拉致問題の解決など、自分がやらなければ誰も本気でやることはないという自負と使命感がある。
ただ、加計学園の獣医学部新設問題をめぐっては、全く身に覚えがないゆえの質問者を突き放したような答弁が、有権者の不興を買ったことに深い反省を抱いているようだ。
「(内閣支持率低下は)私の答弁への批判もあるのだろう」
「疑念の目が向けられるのはもっともだ。その観点が欠けていた」
24日の衆院予算委員会で安倍首相は繰り返しこう述べ、丁寧な説明を心掛けた。失われた信頼は一度には取り戻せないが、政治手法でも漸進主義をとる首相は、焦らず時間をかけて取り組む覚悟なのだろう。(論説委員兼政治部編集委員 阿比留瑠比)