浪速風

土用の丑に斎藤茂吉をしのぶ 大の鰻好き、大歌人らしからぬエピソード

大阪の台所「黒門市場」では、早朝からウナギを焼く店では大忙し、辺りは香ばしいタレの匂いに包まれた=25日、大阪市中央区(前川純一郎撮影)
大阪の台所「黒門市場」では、早朝からウナギを焼く店では大忙し、辺りは香ばしいタレの匂いに包まれた=25日、大阪市中央区(前川純一郎撮影)

斎藤茂吉は鰻(うなぎ)が大好物だった。「ゆふぐれし机のまへにひとり居りて鰻を食ふは楽しかりけり」。長男の結婚が決まっての両家顔合わせの席で、相手の女性が一口箸をつけただけの鰻をもらって食べてしまったとか、一度は断った地方での講演を、夕食がその地の名産の鰻と聞いて引き受けたとか。

▶文化勲章を受章した大歌人らしからぬエピソードに事欠かない。日記から鰻を食べた回数を数えると902回もあったそうだ。戦争が始まって、もう鰻が食べられなくなるだろうと、かば焼きの缶詰を大量に備蓄したが、「戦中の鰻のかんづめ残れるがさびて居りけり見つつ悲しき」。

▶茂吉は、鰻には神秘的な力が宿っていると信じていたようで、どうしても歌ができない時に、鰻を食べて一気呵成(かせい)に十首を詠んだという記述が日記にある。茂吉ほどではないにしても、日本人は鰻好きである。今日は土用の丑の日。奮発しようか。スラスラと原稿が書けるかもしれない。