埼玉県の県立川の博物館(寄居町)は22日、日本に3体しかないニホンオオカミの剥製標本のうち、和歌山大学教育学部が所蔵する1904年ごろに奈良県で捕獲された1体の展示を始める。開催中の特別展「神になったオオカミ〜秩父山地のオオカミとお犬様信仰〜」の一環。同館は「オオカミの実像を知り、魅力を再発見してほしい」としている。
明治期に絶滅したとされるニホンオオカミはかつて日本の山間部に生息。秩父山地でも多くの伝説を残し、毛皮や頭骨などが伝わっている。特に秩父山地はオオカミ信仰が盛んで、「お犬様」などとしてオオカミをまつる神社が三峯神社(秩父市)を中心に21を数え、信仰は今も続いている。
同展はニホンオオカミの絶滅の歴史とヨーロッパのオオカミとの違いなどを剥製標本や頭骨、パネルなどで紹介。さらに、秩父地方に伝わるオオカミの昔話、小鹿野町の龍頭神社に奉納されたオオカミの木像や画家、河鍋暁斎らの掛け軸、絵馬、護符などオオカミ信仰を示す資料など計約100点が展示されている。
羽田武朗学芸員は「ニホンのオオカミは決して怖いイメージではない。神様としてまつられ、昔話に出てくる姿などを通し、いろいろな視点から捉えてほしい」と話している。
同展は9月3日まで。ニホンオオカミの剥製標本展示は8月20日まで。観覧料一般410円など。問い合わせは、同館(電)048・581・7333。