担当した彩色工が、「眠り猫は実は薄目を開けている」との伝承を意識した結果だったという。
「不眠猫」説も…
寝ているから「眠り猫」だが、「実は眠っていない」との伝承にも、それなりに根拠がある。
長期間戦乱のなかった江戸時代の平和を象徴しているとすれば、熟睡していたともいえるが、一方で、家康の墓所への参道を守る立場でもある「眠り猫」。耳を立て、前足も踏ん張っているような、今にも飛びかかれる臨戦態勢のようにも見える。
動物の生態として、この前足と耳の状態は、「寝ているといえるのか」いう議論もある。
裏の彫刻でスズメが遊び、「(天敵の)猫も寝ている平和な時代」との解釈も実は、「寝たふりをしてスズメを狙う。これが徳川政権、江戸幕府の恐ろしさ」と裏読みすることもできる。これはさすがに想像の羽を伸ばし過ぎか。
伝承、確認できず
薄目を開けた眠り猫は、日光社寺文化財保存会によって、数日後に目を閉じた状態に塗り直されたが、今年6月下旬、再修復されたことが地元メディアで報じられ、話題になった。
保存会は担当者に話を聞いた上で、「眠り猫が薄目を開けているとの伝承を確認できる史料がない。それならば、目を閉じている元の姿が正しいのではないか」と結論付けたという。