トランプ米大統領が示唆する鉄鋼製品の輸入抑制策は、世界的な貿易紛争に発展する危険性をはらむ。米国は中国製鉄鋼が第三国を経由して流入しているとみているため、日本を含む幅広い国が制裁対象になりうるからだ。強硬な通商政策は、内政で成果が上がらない焦りが背景にあるとみられ、日本への市場開放圧力も強まる懸念がある。
「とんだとばっちりだ」
経済官庁幹部は米国の制裁案に困惑を隠せない。
トランプ政権は鉄鋼の大量輸入で米鉄鋼メーカーの生産力が奪われることで、戦闘機や軍艦などの製造にも支障が出る恐れがあるとみる。輸入製品が安全保障上の脅威になる場合、大統領が是正策を取れると定めた米通商拡大法232条に基づき高関税と輸入割り当ての同時適用を検討する。
米国の鉄鋼製品の輸入量に占める中国製の割合は、オバマ政権時代から続く反ダンピング(不当廉売)税などの影響で3%未満まで落ち込んでいる。ただ、トランプ政権は、課税を避けるため中国製品がアジアなど第三国市場を経由して流入しているとみており、日本を含む中国以外の国も制裁対象になる恐れがある。政府はトランプ政権に対し、中国製鉄鋼が日本を経由して米国に輸出されることはないと理解を求めているが、免れる保証はない。