創業特区の福岡市、労基法の賃金規制緩和要望へ

 国家戦略特区「創業特区」に指定されている福岡市が、労働基準法が定める賃金支払い制度について、規制緩和を国に要望することが13日、分かった。労基法によると賃金は月1回以上、通貨で直接労働者に支払うよう定められている。この制度を柔軟にすることで、コンテンツ部門のフリーランサー(個人事業主)らの利便性を高め、さらには発展途上国での労働環境の改善につなげる。(村上智博)

                   ◇

 毎日、働いた分の賃金の枠内で、スマートフォンのアプリを使って、すぐに買い物ができる-。市はこんな決済システムを想定している。

 同市中央区のベンチャー企業「ドレミング」が、システムを構築している。

 同社は途上国の労働者や、難民に銀行口座を持たない人が多く、生活に支障をきたしている点に着眼した。「働いている人誰もが、決済手段を利用できる世界を作りたい」と、こうした労働者の支援を目指す。

 具体的には、企業のタイムレコーダー情報などを基に、アプリで賃金を計算する。この賃金を担保に、買い物ができる。労働者には給料日、買い物で使った分を差し引いた給料が支払われる。

 給料日まで待たずに買い物ができることで、働くことへの意欲を高め、自立につながると期待する。

 同社は福岡市で実践することで、システムのさらなる改善を目指している。

 福岡市側にとっても、メリットがある。

 コンピューターなどのコンテンツ部門の技術者には、フリーランサーも多い。月初に数日間の仕事をこなしても、給料支払いは後回しというケースがあるという。

 ドレミングのシステムを使えば、フリーランサーの希望に添って、給料支払いの柔軟性を高められる。働きやすさが増し、優れた技術者が福岡に集まると期待できる。

 国家戦略特区で取り組む規制緩和の内容は、国と福岡市が参加する「区域会議」で協議する。同市は次の区域会議に、労基法の規制緩和を提案できるか検討する。 ◆開業率1位

 福岡市が平成26年5月に「グローバル創業・雇用創出特区」に指定され、丸3年が経過した。市は特区制度を活用しながら、まちづくりに取り組んできた。

 今年4月には、旧大名小学校(中央区)の校舎を活用した創業支援施設「福岡グロースネクスト」をオープンした。

 市は現在、12の規制改革のメニューを活用し、29事業を実施する。例えば、外国人が起業しやすいよう、在留資格の条件を緩和する「スタートアップビザ」や、創業初期の企業を税制面で支援する仕組みがある。

 こうした取り組みにより、市は政令指定都市で、開業率が1位となった。市内の創業支援施設を活用し、起業した企業は5月で100社を突破した。

 創業特区からは地域振興に加え、貧困など国際的課題への解決策も、生まれようとしている。

会員限定記事会員サービス詳細