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フィギュアスケート・コーチ 浜田美栄(4) 「楽しさ」得るため厳しく教える

コーチとして多忙な日々を送る。宮原知子(左下)が小学校時代の国際大会にも同行した(本人提供)
コーチとして多忙な日々を送る。宮原知子(左下)が小学校時代の国際大会にも同行した(本人提供)

 〈指導者になって36年目。現在は5歳から24歳まで40人近い生徒を抱える大所帯になった〉

 一日の生活は朝からリンクに立ち、練習は夜遅くまで。演技の振り付けを考えたり、大会の遠征に同行したり。ゆっくり体を休められる時間は、ほとんどありません。好きなんですよね、フィギュアスケートが。単純なことなんです。

 平成6年10月に長女を出産したときも、前日までリンクで指導していました。3カ月後に全日本選手権を控えた選手がいて、その子にとっては最後の大会だったんです。後悔を残してほしくなかったので、「代わりの指導者を探そうか」と聞いたら、「待ちます」と言ってくれました。だから、出産から3週間で復帰。全日本の会場で授乳もしました。

 〈練習中は小さな子供たちにも真剣なまなざしを向ける。スケート靴を履いて氷上に立ち、常に厳しい声が響く。女子で史上7人目となるトリプルアクセル(3回転半ジャンプ)を成功させた紀平梨花ら、次代を担う選手も育ってきた〉

 教え方は、最初から厳しいです。それは、私が生徒たちに、何かを達成することで得られる「楽しさ」を覚えてほしいと思っているからです。失敗したり、上達できなくても、笑って練習することを「楽しい」と思う人がいるかもしれないけれど、私にはそれがむなしく思えてしまうんです。

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