だが、MIRVは高度な開発技術を要求され、実戦段階のMIRVを完備できているのは5大核保有国+αに限定される。従って、北朝鮮の火星14型が有する「多弾頭」とはMIRVではなく、複数の弾頭が一つの標的を一斉に攻撃する「多弾頭」だとの多数説に、筆者は賛同している。そうだとしても、「火星14型多弾頭」の迎撃は、単弾頭の火星13型より格段に困難になる。ソ連→ロシアは北朝鮮の国際法違反に手を貸したのである。
ロシア国防省は4日、「独自の防衛システムで(火星14型)ミサイルを捕捉したが、国内に何の『被害』もなかった」と発表した。が、自らが育て上げた北朝鮮の核・ミサイル技術で『被害』を被っても自業自得ではないのか。
ソ連は1965年、北朝鮮との間で原子力研究協定を締結し、発電容量2メガワット級の実験用原子炉1基を北に提供した。北朝鮮は1974年、ソ連製原子炉の8メガワット級への拡充に成功。1985年には、両国の間で1500メガワットの高出力原子力発電所建設協定が結ばれた。
北朝鮮は金日成総合大学と金策工業大学に原子力工学部を設け、相当数にのぼる留学生をソ連に派遣し、核科学者を育て上げた。ソ連崩壊(1991年末)に伴う独立直後のウクライナに所在した核融合研究所で、数百人が研修を受けていたとの関係者証言もある。かくして現在でも、北朝鮮内の核開発指導部は、ソ連やウクライナへの留学組で占められる。
ソ連崩壊で失業した軍や研究機関の核科学者・技術者も高い報酬・待遇でリクルートされ、北朝鮮に大挙(一説には200人規模)して押し寄せた。