再生医療が描く未来(1)

臨床経験で見えた可能性 鍵本忠尚ヘリオス社長

iPS細胞治療薬開発に挑む「ヘリオス」の鍵本忠尚社長=神戸市中央区のヘリオス神戸研究所(南雲都撮影)
iPS細胞治療薬開発に挑む「ヘリオス」の鍵本忠尚社長=神戸市中央区のヘリオス神戸研究所(南雲都撮影)

 再生医療の実用化を目指し、人工多能性幹細胞(iPS細胞)を使った医薬品の開発で注目を集めるベンチャー企業「ヘリオス」を率いる。眼科医として臨床現場に立った経験で芽生えた「患者の希望となる薬を作り、届けたい」という思いが起業につながった。その熱意が次世代の医療を切り開いていく。

細胞が薬になる

 --iPS細胞を使った治療薬の開発を進めています

 鍵本「平成22年、iPS細胞を使った加齢黄斑変性の治療の研究を進めておられた理化学研究所の高橋政代先生から、事業化しないかと声をかけられました。そのとき、すでに1つベンチャー企業を立ち上げていて、九州大医学部発の眼科手術補助剤を欧州で発売していたのをご存じで、『1つ(製品を)出してあなた暇になったでしょう。1つ出したら出せるでしょう』と言われたんです」

 --再生医療に携わったことはなかったですよね。躊躇(ちゅうちょ)はなかったのですか

 鍵本「その場で「はい」と即答しました。「細胞が薬になる」ということが肌感覚で理解できたんです。短い期間ですが、眼科の臨床医としての経験からです。眼科に行くと、医師は目を見るでしょう、あれは目の奥の細胞を見ている。いろんな年代の人の細胞を見てきました。年を取ると細胞にもそれが現れるのです」

 --どんな風にですか

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