産経抄

三隈川に〝濁り〟は似合わない 7月9日

 ▼杉かヒノキか。日田市小野地区では、土砂崩れによる流木が集落を押しつぶした。消防団員の男性が犠牲になったという。本来は保水の役目を果たす植林でもあったろう。温暖化の余波なのか、人知の無力さに言葉を失う。空の動きも地球の行き着く先も読めない。

 ▼淡窓に三隈川を詠んだ漢詩がある。〈十里の清江 藍も如(し)かず/人家 往往 流れに架して居(す)む…〉。流れは藍も及ばぬほど青く、川沿いの家々は流れの上に床を出して暮らしを営んでいる、と。豪雨。濁流。線状降水帯。濁りをもたらす天が憎い。

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