■「向上の意気」羽ばたく卒業生
「全然声が出てねーぞ」「腹からしっかり出せ!」 5月下旬、校内に応援団の声が響いた。同じ福岡県飯塚市内にある嘉穂東高校との野球定期戦を、数日後に控えていた。
定期戦は昭和28年に始まった。「筑豊の早慶戦」とも呼ばれる。創立100年を超す伝統校同士の対戦に、地域は熱狂する。両校にとって試合はもちろん、スタンドの応援も負けられない。
スタンドの盛り上がりは、4月の新入生指導の成果でもある。
嘉穂高校を語るとき、伝統行事「応援指導」は外せない。
壇上の応援団が、整列した1年生に校訓や嘉穂魂とは何たるかを伝える。応援団は丸刈りに、はだしで腕を組む。この間まで中学生だった新入生から見れば、迫力に満ちた姿だ。
応援団の問いかけに、大声で返事をし、校歌や応援歌を全力で歌う。
校内での指導が数日間続き、2泊3日の宿泊研修で締めくくりを迎える。
「最終日に『有意義な学校生活を送ってくれ』と伝えると、涙を流す1年生がいた。その姿を見て、指導した自分も感謝の気持ちがわいた」。現応援団長の山本悠雅さん(18)は語る。