正論

香港人は共産党の敵か味方か 人民解放軍は反抗する国民を守らない 東京国際大学教授・村井友秀

 沿岸部で日本軍と戦っていた国民党は、強力な日本軍との戦いを避け「安内攘外(じょうがい)」(まず国内の共産党を平定し、その後で外敵の日本軍を打倒する)を主張した。しかし、日本軍に負け続ける国民党の評判は悪かった。

 他方、沿岸部で戦う日本軍の手が届かない内陸部にいた毛沢東は、日本軍との戦いを声高に叫び民族主義(抗日民族統一戦線)を主張して、外国の侵略に反発する中国人の心をとらえた。ただし、日中戦争における約2800回の戦闘のうち、共産党軍が参戦したのは8回だけだった。日本軍は米軍に敗れ日中戦争は終わった。

 日本軍の侵略によって覚醒した中国人の民族主義が、共産主義ではなく民族主義を唱えた中国共産党を、日中戦争後の国共内戦で政権の座に押し上げたのである。まさに毛沢東が述べたように「日本軍の侵略は中国革命の母」(『毛沢東思想万歳』)であった。

≪拡大するイデオロギー的矛盾≫

 現在の中国共産党政権にとって民族主義と経済発展が正統性の根拠である。しかし、経済発展は不安定になりつつあり、共産党が自信を持って頼れる正統性は民族主義である。ところが、共産主義は理論的に民族主義を否定する。中国共産党はそのイデオロギーに深刻な矛盾を抱えている。