正論

香港人は共産党の敵か味方か 人民解放軍は反抗する国民を守らない 東京国際大学教授・村井友秀

東京国際大学教授・村井友秀氏(寺河内美奈撮影)
東京国際大学教授・村井友秀氏(寺河内美奈撮影)

 日本の自衛隊は日本国民を守る。米国軍は米国民を守る。中国の人民解放軍は誰を守るのか。

≪生き残った「民族主義国家」≫

 共産主義国家には2つのタイプがあった。ソ連が占領した東欧に生まれた共産主義政権はソ連の傀儡(かいらい)政権であった。

 どのような国家でも、政府は軍や警察などの強制力と国民の同意によって支えられている。

 しかし、東欧の共産主義政権に国民の同意はなく、ソ連軍という強制力によって支えられていた。強制力が無くなると東欧の傀儡政権は崩壊した。他方、アジアの共産主義国家は共産党が民族主義を掲げて自力で政権を取った民族主義国家である。国民は共産党が掲げる民族主義に同意した。

 世界の労働者が団結して資本主義と戦う共産主義にとって、「一民族一国家」を目指す民族主義は否定されるべき思想である。民族主義は階級闘争を否定し、労働者と資本家を分けず、他民族と自民族を区別し、自民族の利益を極大化する思想である。

 それでは民族とは何か。民族は遺伝子で決まる人種とは異なり、「運命共同体」であると信じている人間の集団である。近代国家が成立すると国民が民族になった。国家は教育を通じて国民は共通の運命の下にあると教えるからである。「民族はその構成員が満場一致的にそうであると信じるがゆえに民族である」と言われる。民族の定義は曖昧だが、人間は民族を単位として戦ってきた。