国内政治が大きな波浪に見舞われていようとも、国の安全保障に空白や停滞を生じさせることは許されない。
2日午前から昼過ぎにかけて、中国海軍の情報収集艦が津軽海峡の領海に侵入した。名称にかかわらず、武装しているれっきとした軍艦だ。
東京都議選の当日の隙をねらい、自衛隊の即応態勢を試した可能性もある。政府が外交ルートで中国側に懸念を伝えたのは当然だが、それで十分か。
こうした場合、自衛隊が海の治安維持に当たる措置をとれるよう、海上警備行動を発令することを積極的に検討すべきだ。
日本は国際法上、津軽海峡をすべて領海にすることもできるが、領海幅を狭く設定したうえで、海峡の中央部を「国際海峡」として開放している。
にもかかわらず、中国の軍艦は近道をする進路をとって領海に侵入し、太平洋へ抜けていった。
隣家に土足で上がり込むような行動である。日本へのあからさまな嫌がらせ、示威行動である。とても無害通航とは思われない。
中国海軍による領海侵入は、これが3回目となる。
平成16年11月には、原子力潜水艦が沖縄県石垣島周辺の領海を潜没航行した。海上警備行動が発令され海上自衛隊が追跡した。
昨年6月には、日米印の演習に参加中のインド海軍艦船を追尾していた中国の情報収集艦が、鹿児島県口永良部島周辺で領海侵入することがあった。