東京都議選の投開票が行われた2日夜、自民党本部は重苦しい雰囲気に包まれていた。午後10時近くになるまで、候補者の名前が書かれたボードには、一つのバラも飾られていない。お客が入らず、閑古鳥が鳴いている飲食店のようだった。
▼閑古鳥とは、カッコウの別名である。「これは少しヘンではあるまいか」と歌人の小池光さんは疑問を呈する。カッコウの声は本来、明るくてすがすがしい。誰かが当てた漢字の字面(じづら)に引きずられて、もの寂しいイメージが生じてしまった。これが小池さんの推測である(『うたの動物記』日本経済新聞出版社)。
▼都議選では、小池百合子知事が代表を務めた「都民ファーストの会」とは対照的に、自民党には暗いイメージが植え付けられてしまった。張本人は明らかである。「森友、加計学園」問題に加えて、国会議員の暴言、失言が次々に発覚した。昨日の各紙は、「安倍1強」のおごりを指摘していた。
▼投開票日の夜、安倍晋三首相の姿は都内のフランス料理店にあった。麻生太郎副総理や菅義偉官房長官らと会談して、都議選の結果について「謙虚に受け止める」との認識で一致したという。
▼飲食店の勘定や会計の意味で使われる「お愛想」は、「愛想尽かし」を略したものらしい。客に勘定を請求する際、愛想尽かしなことですが、と店側がへりくだったのが始まりである。逆に客が「お愛想して」などと言えば、「こんな店には愛想が尽きた。二度と来ない」という意味になってしまう。