歴史的大敗に終わった東京都議選の結果を受け、安倍晋三首相は「自民党に対する厳しい叱咤(しった)と深刻に受け止め、深く反省しなければいけない」と語った。
選挙結果が安倍政権への批判であることを率直に認め、対応することが必要だと判断した。当然のことだろう。
もとより、惨敗に至った原因や経過を正しく総括するのは重要だが、それは単に有権者の機嫌をとることではない。
憲法改正や経済再生など、首相が挑む課題の実現には、険しい道のりがある。突き進むには国民の信頼と理解が欠かせない。それを取り戻すことが、首相の大きな責務である。
首相は通常国会終了後の会見でも、国会答弁などについて反省を口にした。だが、政権の「おごり」や「緩み」が消えたと考えた有権者は少なかった。
閣僚らの相次ぐ失言に加え、政権の「加計学園」問題への対応のまずさは、首相が自ら認めたことである。
防戦に追われ、政権として日本や国民のためにどんな仕事を進めていくかも伝えきれなかった。わざわざ逆風を吹かせたようなものではないか。
3日の党役員会では政権を結束して支えることが確認された。首相は「結果を出していくことで国民の信頼を回復していきたい」とも語った。問われるのは、それが具体的に何を指すかである。
今後の政権運営にあたり、明確に打ち出せるものがあるのか。将来に期待を抱ける政策を展開できるか。それなしに内閣改造を行っても、政権を取り巻く空気を変えるのは難しかろう。
見失ってはならないものは何か。都議選を経て、2020年施行の憲法改正実現を目指す方針に揺らぎがあってはならない。
選挙により憲法改正反対の民意が示されたといった意見は、反対派の宣伝にすぎない。
憲法改正は争点ではなかったし、都民ファーストの会を率いた小池百合子東京都知事は、憲法改正が持論である。
とはいえ、政権運営の拙(つたな)さから支持を失えば、憲法改正の機運が衰える懸念は小さくない。
安倍首相は信頼回復に全力を尽くし、憲法改正をはじめとする政策を実現する態勢を再び整えてもらいたい。