それに今は昔と違い、27年の平和安全法制(安全保障関連法)の整備などにより、隊員のリスクを抑えるための武器使用の面などで相当程度の対応ができるようになりました。
ですから、自分の経験から言っても、憲法でフルスペックの「軍」を規定することよりも、まずは自衛官が誇りを持って任務を遂行できる環境をつくることを優先すべきだと思うのです。改正案を作る際の議論を通して、積み残しになる9条の課題がいろいろ出てくるはずです。それらは将来、時機が来たら国民に問えばよいでしょう。
ただ、改憲案の国民投票で過半数を取るのは、ものすごく大変なことですよ。国民投票は「○」か「×」しかない。改憲に反対の人はどうしても反対。賛成派の中にも、例えば「改正内容が甘い」「2項を残すのはおかしい」という理由で反対する人もいる。今から国民投票を見据えた広報戦略が大事です。私たちは、自衛隊明記の意義を丁寧に説明していかなければなりません。
それと、条文はなるべく簡明なほうがいい。私個人の考えとしては「9条の2」という条項を新設し、自衛隊の目的と文民統制も分かりやすく規定したらいいと思うんです。「日本の国家、国民を守るために内閣総理大臣の指揮のもとに自衛隊を置く」とかね。多くの人に受け入れられるのではないのでしょうか。(田中一世、石鍋圭)