心のケア がん患者と家族

(上)人生最大の重圧 気持ち分かち合う場を

 「お母さん、あと1カ月しか持たないって」-。

 娘2人からそう告げられると、埼玉県日高市の自営業、福岡義文さん(73)は、病院の控室で号泣した。妻の香代子さんの胃がんが判明した平成25年夏。すぐに手術したが、すでに腹膜に転移していた。

 「金づちで頭を殴られたようなショックでした」。2人の娘は独立し、夫婦水入らずの生活を楽しんでいた。いろんな土地を旅行し、また、これから連れて行きたい場所もあったのに。

 香代子さんは抗がん剤治療のため入退院を繰り返した。髪が抜け、食が細り、弱っていく。「もう治らないんじゃないか」「俺を置いていかないで」-。暗い考えにとらわれた。

 「香代子が死んだら家を燃やして俺も死のうかな」。そんな言葉で、娘を心配させたこともあった。

会員限定記事会員サービス詳細