大阪大学産業科学研究所の八木康史教授、大倉文生助教らの研究グループは、酪農学園大学(北海道江別市)の中田健教授と共同研究を行い、乳量の減少などにつながる重大な蹄(ひづめ)の病気である「蹄病」について、乳牛の歩行パターンを人工知能技術で解析し、99%以上の高精度で早期発見する手法を開発した。この病気になると、蹄の炎症による痛みから、歩行の様子がぎくしゃくした「跛行(はこう)」という状態に変化する。これまでは中等度から重度になるまで見つけるのが困難だっただけに、乳牛の健康管理を省力化、効率化し、牛乳の生産量や品質を高める技術として期待される。
蹄病は、乳房炎などとともに乳牛の三大疾病の一つとされる。発症には飼育環境や栄養管理、遺伝など多様な原因が関わっており、蹄の痛みなどから食欲が減り、乳量の減少に結びつく。これまでは、乳牛の背中が湾曲する度合いを画像から検出して調べる手法が研究されていたが、対象は中程度〜重度の段階。さらに、治療の期間を短縮できる軽度の段階の早期発見が必要とされてきた。
八木教授らは、個々の人間の歩き方を映像で解析し、それをもとに個人の識別や感情を推定する技術を開発しており、それを蹄病の検出に応用した。
蹄病の有無やその状態については、背中の湾曲の程度や歩き方によって5段階に分類される跛行スコアがあり、正常(スコア1)から軽度(スコア2)、重度(スコア4、5)まで分けて管理されている。