最近、「をめぐるニュースが相次いでいます。特に東京都内で、痴漢と疑われた人物が線路内を逃走するという事件が続発。JR東日本管内では3月から6月初めまでで、都内の駅だけで9件も発生しています。
恐ろしいのは、死者が出る悲劇的な事例も相次いでいることです。5月12日には、JR京浜東北線上り線の車内で、乗客の女性から痴漢行為を疑われた男性が上野駅で降車した後に改札を突破して逃走。その後、近くで死亡しているのが発見されました。ビルから転落死したとみられています。
3日後の15日には、東急田園都市線青葉台駅で、女性に痴漢をしたと疑われた男性が線路に飛び降り、電車にはねられ死亡しました。
言うまでもなく痴漢は許されない卑劣な犯罪ですが、冤罪(えんざい)が少なくないうえ、そのダメージがあまりにも大きすぎるのではとの疑問の声が出ているのも事実です。
そんな疑問にいち早く声をあげ、大きな話題になった邦画があります。平成19(2007)年の「それでもボクはやってない」(周防正行監督)です。
主人公の金子徹平(加瀬亮)は、就職の面接試験に向かうために乗り込んだ満員電車で、女子中学生に痴漢と間違えられます。
駅員室に連行され、逮捕される彼ですが、無実を訴え裁判で戦うことを決めます。彼の母(もたいまさこ)や友人、さらに彼と同様、痴漢冤罪の罪をかぶせられた人なども、彼の無実を証明するため協力します。
そして協力者たちは、事件現場にいた真実を知る女性を発見。彼が犯行を行うことが不可能だと証明する再現ビデオも制作するのですが…。
実際に起きた痴漢をめぐる裁判を機に、日本の刑事裁判制度に疑問を持った周防監督が徹底取材をもとに作り上げた本作ですが、そのリアルな展開は、満員電車に揺られ、いつ自分に降りかかるかもしれない痴漢冤罪におびえる世のサラリーマンに衝撃を与えました。