過疎地域で健康サポート 奈良で「コミュニティナース」始動 病院の「外」の看護師

 人口流出や高齢化による過疎化が進む奈良県東部・南部地域「奥大和エリア」で、病院の「外」で住民の健康的な生活をサポートする看護師「コミュニティナース」を配置するプロジェクトが始まった。病気の予防や早期発見が役割で、「病院で働く人」という看護師の固定イメージを大きく変える取り組みとなる。(田中佐和)

 同県北東部に位置する山添村。人口約3600人、高齢化率44%のこの過疎の村で、4月から活動を始めたのが、県がコミュニティナース第1号として採用した横浜市出身の看護師、荏原(えばら)優子さん(31)だ。

 荏原さんは数年前まで、神奈川県横須賀市にある病院の救命救急センターで勤務していた。運ばれてくるのは、心肺停止状態や重症化した患者たち。独居高齢者が多く、重篤化するまで医療につながることができなかった現実に、強い違和感を覚えたという。「もっと地域の人の近くで働きたい」と考えていたときにコミュニティナースの存在を知り、人材を募集していた山添村に移住した。

 コミュニティナースとは、地域に入って病気の予防方法を教えたり、住民が集まって交流できる場所を作ったりする医療人材のこと。地域の健康度を高め、住民同士の「支え合う力」をはぐくむことで、僻地(へきち)医療や介護負担を減らすことが目的だ。医師の指示下ではないため注射を打つなどの医療行為はせず、病気の予兆に気付けば医療機関につなぐという。

 海外では一般的だが、日本では島根県雲南(うんなん)市で数年前に始まったばかり。現在は同市と京都府綾部市で約20人が活動しており、奈良は全国3例目となる。

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