都市を生きる建築(99)

近代が生んだ「大阪の御殿」都会の中で自然を味わう贅沢 太閤園淀川邸

 緑豊かな築山式回遊庭園には、大川からの水が引き込まれている。そのコレクションが藤田美術館に受け継がれた藤田男爵らしく、自然の奇石や由緒ある石塔や燈籠などが配されて趣味深い。都会の中での自然を味わう贅沢(ぜいたく)は今や、訪れる人みなのもの。茶室の窓を開け放てば、池の上に遊んでいる気分だ。

 近代に入ると江戸時代のように、身分によって建てて良い建物が制限されるといったことが無くなる。材木も大工道具も自由に流通するようになる。競争の中で職人の技もいっそう磨かれる。明治から戦前にかけての時代は、和風建築の黄金期でもあるのだ。

 近代の大阪の粋(すい)を体験できる淀川邸の生みの親は藤田男爵。育ての親は、晴れの場として建築に思い出を刻み、維持していった市民たちだろう。(倉方俊輔/建築史家・大阪市立大学准教授)

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