3歳女児虐待死 母親に懲役13年判決 「危険な兆候見逃すな」 埼玉

 ■面会拒否、あざ NPO法人代表指摘

 狭山市のマンションで昨年1月、藤本羽月(はづき)ちゃん=当時(3)=に冷水をかけて放置するなどの虐待をして死亡させた事件で、保護責任者遺棄致死などの罪に問われた母親の無職、藤本彩香被告(24)に求刑通り懲役13年の有罪判決が15日、さいたま地裁(高山光明裁判長)で言い渡された。「虐待死ゼロ」を目指すNPO法人「シンクキッズ」(東京都港区)代表の後藤啓二弁護士は「悲惨な結末の裏には関係機関の情報共有不足がある」と分析している。(川上響)

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 「近くにいたら助けてあげたかった」。閉廷後に開かれた会見で、30代女性の裁判員は羽月ちゃんへの思いを吐露した。一方で「どこまでがしつけでどこからが虐待なのか。自分が通報できるかというと気が引けてしまう」と児童虐待への対応の難しさも口にした。

 後藤弁護士は「しつけでも体罰という名の暴力は絶対に許されない。特に自分の意見が言えない乳幼児は周りが注意しなければいけない」と指摘する。

 後藤弁護士によると、虐待を判断するための危険な兆候はいくつかのパターンに分けられる。最も危険なのは、面会・指導の拒否。このほか、(1)乳幼児検診未受診(2)同居人あり(3)傷やあざがある(4)児童が無表情(5)威嚇する言動-などがある。今回の事件は終盤になって、これらの兆候がみられた。

 「羽月ちゃんの乳幼児検診が未受診だったことや、110番通報があったことを関係機関が知っていれば防げたのではないか」。県に先月、児童虐待の情報を関係機関で共有するよう求める要望書を提出した後藤弁護士は事件をこう振り返る。

 児童相談所が児童を保護すべきか、自治体が親子関係を支援すべきか、警察が関与すべきか-。各機関がそれぞれの特徴を生かしながら協力して取り組むことが求められる。

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