≪2項の裏に存在する差別主義≫
9条1項は、国際紛争を解決する手段としての戦争放棄という、現在の国際法の規定をそのまま書いたもので日本国憲法の特徴ではない。フィリピン憲法にもイタリア憲法にも戦争放棄規定が存在する。ただし「陸海空軍その他の戦力」の不保持を明記している2項は日本だけの特殊な規定だ。
この規定があるために政府はこれまで「自衛隊は戦力ではなく自衛のための必要最低限の実力組織だ」という、ある意味で詭弁(きべん)とも言うべき憲法解釈をとってきた。
占領下で作られた2項の裏には日本民族だけには戦力を持たせてはならないとする、「日本民族性悪説」というべき差別主義が存在する。日本民族は生まれつき暴虐で正義観念を持たないので、戦力を持たせると再び世界征服を夢想して大量虐殺をしでかしかねない、という偏見だ。これを正当化するのがゆがんだ歴史認識である。南京大虐殺や慰安婦強制連行など、いまも国際社会で広く信じられている虚偽がこの偏見を後押ししている。
悔しいことに、このような偏見をいまだに多くの日本人が信じ、それを世界に広げている。日本軍は植民地として支配していた朝鮮から20万人の若き女性を強制連行して性奴隷にしたという虚構を世界に広げたのは、日本人活動家と日本の大手マスコミだった。