米国が地球環境問題で示す2度目の不誠実である。身勝手に過ぎる振る舞いだ。
トランプ米大統領が地球温暖化防止対策の世界の新たな取り組みである「パリ協定」からの離脱を発表した。
先進国のみが削減義務を負う現行の「京都議定書」に代わり、途上国も削減に加わるパリ協定の細目を固めつつある段階での翻意である。米国の離脱は、全世界がそろえた二酸化炭素(CO2)排出削減の足並みを乱すものだ。
パリ協定への期待の高さは、2国で世界の全CO2排出量の約40%を占める中国と米国が名を連ねたことにあった。
先進国を代表する存在でありながら対策に背を向けてきた米国の参加で、気温上昇抑制への実効が望めるようになったことが大きかった。その期待の基盤が、トランプ氏の保護主義的な対応で損なわれるのは遺憾である。
離脱の理由として同氏は、パリ協定が米国にとって不利益をもたらすことを挙げた。露骨な「米国第一主義」の表れと言えばそれまでだが、実は地球温暖化問題の本質の一部を鋭く突いている。
温暖化防止をめぐる国際交渉の現実は、CO2を弾丸とする経済戦争でもあることを如実に物語る対応なのだ。かけがえのない地球を守る美しい理想論だけで解決できる問題ではないことを、日本政府は再認識すべきである。