いじめ傍観者にならないで 柏の中学校で生徒討論

 友人がネット上でいじめに遭っているのを知ったとき、あなたならどうする? こんなケーススタディーが柏市の中学校で行われた。同市では、いじめを匿名で通報できるスマートフォン用アプリを生徒に無償提供。生徒がいじめの傍観者にならないことを目指しており、SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)上で始まるいじめの芽を摘む取り組みに本腰を入れる。

 ◆周囲の行動が解決の鍵

 黙っているのか声を上げるのか、二者択一で即答できずに悩む生徒が多かった。柏市立土中学校(同市増尾)で公開されたいじめ防止授業。ネットいじめの目撃者になった場面を想定し、映像を見た後にクラスメートで話し合った。

 約1万人の中学生がいる柏市では、平成27年度952件のいじめが確認された。スマホの普及でSNS上のメッセージを使ったいじめが急増。このうち、スマホを持ち始めることが多いとされる1年生が569件を占めることから、同市教委は千葉大、敬愛大と連携し、市立全20中学の1年生を対象にしたネットいじめ防止授業を今年度スタートさせた。

 いじめと直接関係ない周囲の生徒の行動が、事態を深刻化させるか解決に導くかの鍵を握るとされており、市教委は「いじめ傍観者をなくすこと」を狙う。授業では、ネットいじめの対象になり、孤立していく1年生男子の様子を描いた約10分間のビデオドラマを見て、「その後の自分たちの行動」をグループで話し合った。

 公開された土中1年1組の授業では、ビデオを見た22人のうち18人が「いじめをやめるよう呼びかける」を選択。伊沢海翔君(12)は「悪いことは悪いと声をあげるべきだと思い、『呼びかける』にした」と話した。一方、4人が「自身がいじめに巻き込まれないための自己防衛」を理由に「呼びかけない」を選んだ。

 授業プログラムを開発した千葉大の藤川大祐教授は「ネットいじめを許さない雰囲気を作ることが重要なことは研究からも明らか。生徒の行動を促すため、傍観者の視点から作られたプログラム。活用を広げていきたい」と話している。市は順次、残る中学でも授業を行う。

 ◆匿名通報アプリ無償提供

 一方、市教委はいじめを匿名で通報できる米国で開発されたスマホ用のアプリ「STOPit(ストップイット)」を市立中の全生徒に無償で提供している。スマホの画面の「報告」のアイコンに触れると、市教委に匿名で文書を送れる。市教委とはメッセージのやりとりができるが、市教委は学校名と学年しか分からない仕組み。周囲のいじめを見ても、学校に伝えず、親にも言わないケースが多いとされることから、手軽で匿名性が高いこのアプリの効果は大きいと市教委はみている。

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