共謀罪の構成要件を厳格化した「テロ等準備罪」を新設する組織犯罪処罰法改正案は、29日の参院本会議で趣旨説明と質疑が行われ、審議入りする。与党は今国会で確実に成立を期す構えだが、廃案を狙う野党は、答弁に不安が残る金田勝年法相を追及するとともに、学校法人「加計学園」(岡山市)問題も積極的に取り上げ、対決姿勢を強める考え。審議の行方は、6月18日までの国会会期の延長問題も大きく左右する。
参院では、30日の法務委員会で、安倍晋三首相が出席して実質審議も始まる。首相は27日、訪問先のイタリア・シチリア島での記者会見で「参院でも丁寧な、できる限り分かりやすい説明を心がけたい」と語った。
一方、民進党の蓮舫代表は28日、都内で記者団に「今の政権が行政をゆがめていないか。この部分を明らかにしないと内心の自由を覆しかねない共謀罪の審議をするには問題がある」と述べ、参院法務委で加計学園の大学獣医学部新設問題も取り上げて首相を揺さぶる構えを示した。
改正案は衆院で約30時間審議された。参院法務委の定例日は週2回で、自民党参院幹部は「会期末まで1回6時間ずつ審議を重ねれば、ギリギリ会期延長せずとも成立可能」と語る。
ただ、今国会では、天皇陛下の譲位を可能とする特例法案や、衆院選「一票の格差」を是正する公職選挙法改正案、性犯罪を厳罰化する刑法改正案など重要法案が残ったままだ。
与党は加計問題の影響も考慮し、会期延長に慎重だが、自民党幹部は「審議時間に少しの余裕もない」と語り、小幅延長にも含みを持たせる。