約50年前の大学獣医学部新設を最後に、需要が充足しているとして文科省が昭和59年以降、定員を抑制する方針を堅持してきた獣医学部。その厚い岩が、安倍のドリルの掘削対象に選ばれた。
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国家戦略特区は、安倍内閣で平成25年6月に閣議決定された成長戦略「日本再興戦略」に盛り込まれた政治主導の重要政策だ。国が指定した地域で岩盤規制に風穴を開け、新たな活力を生み出す-というのが趣旨。獣医学部新設に関する検討事項は27年6月の閣議で決定された。
これらを踏まえれば、加計学園の獣医学部新設で「総理のご意向」があったとしても不自然ではない。実際、安倍が獣医学部新設に向け制度見直しを表明する約2カ月前の28年9月、国家戦略特区ワーキンググループ(WG)の会合で、事務局の内閣府審議官が「総理から検討を深めるようお話をいただいている」と述べてもいる。
むしろ、会合ではWG委員が、昭和59年以降続いている獣医学部の定員抑制方針を盾に難色を示す文科省側に対し「定員管理で縛る話ではない」などと主張する姿勢が目立った。文科省は既得権を守る抵抗勢力だったのか。立場によって見解は分かれる。
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