混迷文科省 前次官告発(中)

獣医学部50年新設なし 強力な権限、「教育村」に君臨する官庁

会見に臨む前文部科学事務次官の前川喜平氏(左)=25日午後、東京都千代田区(福島範和撮影) 
会見に臨む前文部科学事務次官の前川喜平氏(左)=25日午後、東京都千代田区(福島範和撮影) 

 「しっかりとした法令に基づき、根拠を持ってやっていると確信している。何ら問題ない」。地方創生担当相の山本幸三は26日の記者会見でこう述べ、学校法人加計(かけ)学園が国家戦略特区を活用した獣医学部新設の経緯について、所管する内閣府として再調査しない意向をきっぱりと示した。

 念頭には、文部科学省前事務次官の前川喜平(62)による前日の記者会見があった。内閣府側が「総理のご意向」などと発言したとされる記録文書を「本物だ」と主張した前川は、獣医師需給の見通しが示されなかったとして、「薄弱な根拠の中で規制緩和が行われた。公平、公正であるべき行政の在り方がゆがめられた」と批判したのだ。

 積み重ねた議論の公正さを打ち消す発言だけに、前川の元上司である文科相の松野博一は26日、「文科行政がゆがめられたとの認識はない」と一蹴した。

 「総理のご意向」で行政はゆがめられたのか。前川と関係省庁との主張は真っ向から対立する。ただ、加計学園問題は首相の安倍晋三がかつて「岩盤規制も私のドリルからは逃れられない」と、聖域なき規制改革への強い意向をにじませた国家戦略特区の枠組みが前提であることは軽視できない。

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