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優雅なイメージの平安貴族、実はかなりブラックな労働環境だった?

日記に『夜中まで働くと気がおかしくなる』

 相当に過酷そうな平安の貴族ライフ。ということは、平安貴族の日記にも仕事がツライといった愚痴が書かれていたりするのだろうか?

 「書いてあります。藤原行成(972〜1028)という人物を例にします。行成は、『枕草子』の作者である清少納言と友人関係(恋仲?)にあったとも推定されています。彼は有能な官僚としてあの藤原道長に信頼されていましたが、有能なだけに仕事をよく任されていました。仕事の負担があまりにも重いので、彼はついつい愚痴や泣き言を日記(『権記』)にもらしています」

 ほうほう、どんなことが書かれているのだろう?

 「寛弘8年(1011)8月11日の日記を見てみましょう。当日は、同年6月13日に崩御された一条天皇の四十九日の御法会でした。行成は早朝から参加し、事務方として務めましたが、深夜に至るとさすがに疲労が極限にまで達してしまったのか、『夜中まで働くと気がおかしくなる』(原文は『終日、営役の人、心神穏やかならず』)と泣き言をもらしています。行成は非常に多忙な日々を送っていたようで、『権記』によれば長保3年(1001)9月10日には、あまりに疲れているので仕方なく会議に遅刻したとも記されています。平安朝では、有能で勤勉な人であればあるほど仕事を多く任されていたようなので、藤原行成と同じような悩みを抱えていた人は他にも数多くいたと考えられます」

 ううっ、平安貴族の中にも過酷な労働で心身に異常をきたす人がいたとは…今も昔も働くのは大変だったようだ。人類が労働から解放されるときは、いつか来るのだろうか

■参考資料

 渡辺直彦・厚谷和雄校訂『権記』(史料纂集 続群書類従完成会、八木書店) 1978〜1996年

『延喜式』(国史大系26、吉川弘文館)2000年

■論文・学術書

日向一雅「源氏物語と平安貴族の生活と文化についての研究--貴族の一日の生活について」『明治大学人文科学研究所紀要』54 2004年3月

大津透『道長と貴族社会』(日本の歴史06、講談社学術文庫) 2009年

細井浩志「平安貴族の遅刻について」『時間学研究』1 2011年

●専門家プロフィール:宇木まさよし 平安文学研究家。東京大学文学部卒業後、研究機関に所属し、平安文学の研究を行う。中国文学の研究を並行して行い、日中の詩文についての比較をテーマとして活動中。

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