25日午後4時すぎ。報道陣ですし詰めになった東京・霞が関のビル一室の空気が一瞬、固まった。
「女性の貧困について実地の視察調査をしていた」「文部行政をやる上で役に立った」
学校法人加計(かけ)学園(岡山市)の獣医学部設置計画をめぐる記録文書に絡み、文部科学省前事務次官の前川喜平(62)が「確実に存在する」と主張した記者会見。質疑の中で、「出会い系バー」への現職時代の出入りについて、事実関係をあっさり認めた上で想定外の理由を説明したのだ。
教育行政の事務方トップが、売春の交渉現場とも目される怪しげな場所に、夜な夜な出没する-。常識では考えられない裏の顔を覆い隠そうとしてひねり出した理屈なのか。会場には失笑が漏れた。
前川の会見内容に理解を示す文科省幹部も突き放した。「あの発言は口にすべきではなかった。国民から理解されるはずがない」
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「あったことをなかったことにはできない」。前川は記者会見で、文科省が文書の存在を否定した調査結果への不満から、告発する決心を固めた心境をにじませた。
正義の告発者。報道陣の前に姿をさらし、堂々と主張した前川にはそんなイメージを重ねる向きもあるが、水面下では複雑な動きがあった。