農作物の知的財産守れ 海外で無断栽培、九州・山口も危機感 - 産経ニュース

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農作物の知的財産守れ 海外で無断栽培、九州・山口も危機感

福岡県が中国で品種を登録した高級いちご「あまおう」
福岡県が中国で品種を登録した高級いちご「あまおう」

 自治体や農家が海外で農作物を品種登録するのを、農林水産省が支援している。日本国内で開発した高級品種の野菜や果物が、無断で栽培されるのを防ぐためだ。特に「農業王国」の九州・山口は、農作物の知的財産価値を保持できなくなると危機感を募らせ、同省の支援事業に応じるケースが増えている。

 同省は平成28年度から、海外での品種登録に必要な出願料や代理人の弁護士費用などを補助する事業を始めた。同年度第2次補正予算で関連費用3億円を盛り込んだ。

 昨年11月から今年春まで対象になる新品種を募集した。その結果、農業研究所を持つ自治体や品種改良を行う農業関連企業を中心に150件を上回る応募があった。同省によると、九州・山口関連が多く含まれる。

 今年度の当初予算にも3700万円を計上した。今月16日から1カ月間、募集している。

 きっかけは、ブドウの品種「シャインマスカット」にまつわる、ある出来事だった。

 同省所管の農業・食品産業技術総合研究機構(農研機構)が開発し、平成18年に日本で新品種として登録された。一般のブドウより糖度が高く、皮ごと食べられるとあって、海外からも注目を浴びた。

 10年後に事件が起きた。同品種の種苗が無断で中国に持ち出され、販売されているのが発覚した。

 中国政府への品種の登録はしておらず、出願できる期間も過ぎていた。農水省は苗の販売業者に差し止め請求といった、有効な手立てを打てなかった。

 熊本県が開発し、平成13年に国内で品種登録したブランドのい草「ひのみどり」を使った商品が、中国から日本の業者に逆輸入されるとの被害も10年ほど前から相次ぐ。

 「このままでは、日本が新品種を作っても他国産だと勘違いされる。農業王国としては許せない」(山口県内のある自治体関係者)

 九州・山口の生産者から懸念の声が相次いだ。同省は事前に海外での品種登録を促し、被害を食い止める方針を確認した。

 同省知的財産課は「海外での被害に気付いてからでは遅い」と指摘する。

 事前に中国や韓国といった国ごとに海外出願の手引書を作り、外郭団体を通じて研修会を開催するなど、対策を早急に打つ必要性を訴えている。

 九州・山口では既に福岡県が平成15年にこうした被害を見越して、商標名「あまおう」で知られる高級イチゴ「福岡56号」の登録を、中国で済ませた。全国でも先駆的な事例だった。

 山口県は今後、イネの品種登録を目指す。コメを原料とするオリジナルの日本酒を輸出する上で登録を急ぐ必要があると判断した。

 同省の統計によると、27年の農林水産物・食品の輸出額は約7400億円だったが、31年には「1兆円」の目標を立てる。

 環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)をめぐる交渉などが進展すれば今後、より日本産農産品は品質を上げ、外国産に対抗する必要に迫られる。

 その輸出力を強化するには、日本で開発した農産品のブランドが守られることが前提だ。知的財産が十分に保護されなければ、この先の活路は見いだせない。