現役の私鉄駅舎として最も古いとされ、昨年1月に109年に及んだ現役を引退した旧南海本線・浜寺公園駅駅舎(堺市西区)の活用法が決まった。今秋、駅高架化のために南西に約30メートル、曳家(ひきや)の工法で移動させた後、来年3月から、カフェやフリーマーケットなどができるスペース、ギャラリーとして地域住民らのために利用される予定だ。市民との意見交換会を2回開催し、市が方針を決めた。
意見交換会は昨年6月と9月に市内で行われ、それぞれ約30人の市民らが出席。市側が駅舎内を北側、中央部分、南側の3つに分けた活用案を示し、市民から了承が得られたという。
決定された活用法は、駅務室があった北側は交流スペースとし、カフェを運営するほか、市民が持ち寄った本を並べる▽コンコースだった中央部分は多目的イベントスペースとし、朝市やフリーマーケット、ミニライブなどを開催する▽駅舎引退前から趣味活動の作品などが展示されていた南側のギャラリーはそのまま踏襲する-という内容だ。
市は駅を高架化するために今秋、旧駅舎をレールに乗せて動かす曳家の工法で、南西に約30メートル移動。移動は1週間程度で終了する見込みで、内装工事などを経て来年3月から5〜6年程度、駅舎が活用される見込み。すでに地元のNPO法人「浜寺公園駅舎保存活用の会」が運営することが決まっている。
ただ、活用は平成35〜36年度ごろまで。建物の文化財的な価値を調べる調査が行われた後、旧駅舎を曳家で元の場所に戻し、40年3月に高架化した新駅の地上玄関口として生まれ変わる。旧駅舎は、貴重な歴史的価値から新駅舎の一部として生かされることになる。
市連続立体推進課の担当者は「5〜6年程度の間となるが、歴史のある建物なので、地域の人にさまざまな形で活用してほしい」と話している。