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■緻密な構成貫く愛の引力
本を閉じる。ふーっと息を吐く。もう一度本を開き、パラパラとめくり、筋を追ってみたくなった。とにかく面白い。著者20年ぶりの書きおろし長編だという。それだけに凝っている。紹介しようと思うと、何を書いてもネタバレになりそうで難しい。
30代の夫婦にひとりの娘がいる。名前は瑠璃。小学校2年生のときに原因不明の高熱に苦しむ。1週間目の朝、すっと熱が下がり回復する。その後、娘の様子が変だと妻がいう。知っているはずのない黛ジュンの歌を口ずさんでいる。友だちの家の机の上のライターを見てデュポンだという。「目つきが大人びてる、気味悪い」妻がいう。「七歳の普通の女の子だよ」夫が反論すると、「あなたの前では、瑠璃は普通の女の子を演技してるのよ」という。妻の方が変だ、精神を病んでいるのではないかと夫は疑う。そのとき、パジャマ姿の瑠璃が廊下の暗がりに立ってこちらを見ている。ゾッとする。ところが、数ページ先でこの母娘は交通事故で死んでしまう。エエッ? 早すぎる展開に驚く。それどころか、ここから先で、さらに何十倍も驚くこととなる。